オブザーバーの幻影たち vol.3
今日は上手くいったようだ。
気がつくと僕は、ベンチに座っていて目の前には、何処にでもあるような公園が広がっていた。でもここには、まったく見覚えがない。
だか夢の世界では、良くあることだ。記憶にない場所にいるなんてなんとも不思議な感じだが、自分が忘れているだけで実は一度足を運んでいるのかもしれない。
僕は、まず人を探してみることにした。
30分程公園内を歩いたが、同じ景色が続くだけでなにも変化がない。僕は飽きてしまって、草むらに寝転がり大の字になった。
こんなに心が楽なのも久しぶりだった、肩の荷が降りるとことのことなんだろう、何者にも縛られずのんびりする、どうして、こんな簡単なことができない大人になってしまったのだろう。
空を見上げ、ぼっーとしていると突然頭上から女性の声がした。
「すみません」
僕はビックリして身体をビクンとさせながら、辺りを見回すと、そこにいたのは、黒い長髪に白い肌、綺麗な二重瞼からは、眩しいほどに透き通る瞳がこちらを、じっと見つめている。
僕はなんだか、恥ずかしくなって目を逸らした。
「あなたは?」
「うーん。良く分からないわ。」
おっしゃる通りで、僕自信もこの世界における自分は一体何なのか分からない。
「気づいたらここにいたんだ、君は?」
「私もそんな感じ。でも人に会ったのは始めて」
彼女は嬉しそうに、そう言った。
「実は僕もなんだ」