まつばや氏の世界

抗え、最後まで

オブザーバーの幻影たち vol.4


女性と話をしたのも久し振りだったから少し緊張して胸が熱くなるのを感じた。

 

「君はこの世界とは、別の世界から来たの?」 

 

「良く分からない。ここの事は知らないの。でも、ずっとここにいた気がする。」

 

彼女は少し沈黙したのち、そう答えた。

 

「俺もずっとここにいた気がする。小さかった頃遊んでた公園に良く似ててさ。でもいい思い出じゃないんだ。」

 

変なことをくちばしってしまった。

 

「私もそうだった。みんなで遊んでるんだけど。私は楽しくなくて、いつの間にか、私は眺めるだけ。でも本当は、一緒に遊びたかった。」

 

彼女は僕に、似ている。僕は、そう思った。

 

「でももう、遅い。そう思うと悲しくなるな」

 

彼女は、ふふっと少し笑った。

 

「ねえジュース飲もうよ」

 

そう言って彼女は、自販機を指差す。

 

「俺いま、お金なんてないぞ。」

 

そう言いつつ、ポケットを探ってみると何故か千円が入っていた。

 

俺が財布にもいれずに、直接ポケットに千円をいれているはずかない。

 

「そうかこの世界、大抵は願えばなんでも手に入るんだったな」

 

「そうなの?私そんなことできないよ。ほら」

 

そう言ってポケットの中身をこちらに見せてくる。

 

「私も、そんなことできたら良いのに。」

 

「というか、お前ジュース飲もうって言ったくせにお金持ってないのかよ」

 

「ぐ、ぐぬぅー」

 

そう言って彼女は頬を赤らめながら、再び僕の目を見つめる。

 

「分かったよ、奢ってやる」

 

彼女は嬉しそうに笑うと、自販機にとことこと、走っていった。

 

「まったく」

 

現実とほぼ変わらない自販機が、電気もなにもないのに動いていた。

ジュースを買うと彼女はやはり嬉しそうしながら、僕のとなりに座る。

 

「この世界って一体なんなんだろうね」

 

「夢の中、とか?」

 

僕はとぼけるように、そう答える。

 

「夢か、、、、。あんまり良くは覚えてないけど、私が前に居た所、ここに比べて、そんなにいい場所じゃなかった気がする、、、。夢だったら、覚めないでほしいな。」