まつばや氏の世界

抗え、最後まで

ちょっと休んでいいですか? vol.3

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僕は、軽く会釈をしてから、車の後部座席を指差した。

その幼い少女は、なんだか恥ずかしそうに俯きながら静かに車に乗り込む。 

 

「すみません、ビックリしましたよね。」

 

「そうだね。こんなに若い子がくるなんて思いもしなかったよ」


「あなた、中学生ぐらいよね?せっかくの旅行だってのに、未成年誘拐で警察に指名手配されるなんてゴメンなんだけども。」

 

みくさんの最もな指摘が入る。

 

「そこは大丈夫だと思います。うちの親この旅の間は、ずっと父の実家にいっていて私一人だから。」

 

「なら安心ね。面倒ごとはもう勘弁だし」

 

それを聞いて僕も少し安心した。

 

今学生は夏休み期間で、それに合わせた時間指定だったわけだ、僕とみくさんも夏の休みに合わせて今ここに来ている。

 

とまぁ、それでもこの状況で、もう後戻りとは行かない事ぐらい、三人ともしっかり理解している、僕達にある選択肢は前に進むことだけだ。

 

それから僕達は、とりあえず寝ようという結論にいたり、僕もいつの間にか、気を失っていた。

 

 出発

 

コンビニの光だけが皇后と光る漆黒の夜は過ぎて、車の中に四方八方から、眩し過ぎる程の日の光線が窓の数だけ僕達に降りかかり、強制的に三人とも目を覚ました。


僕は、改めてこれが現実であると実感した。

 

「おはよう」

 

目を擦るみくが、見るからに眠そう挨拶をし、それに皆がが小さくおはようと返した。

 

「じゃあ、話し合っていた通りのルートで出発するよ。」

 

二人は小さく頷いた。それを確認すると僕は、コンビニを出発した。

 

沈黙。分かりきっていた事だが、やはり空気が重い。

 

最後になるかもしれない訳で、この空気どうにかしないといけないと思いつつ、僕もそんな器用なことができる人間ではない。

 

そもそも、無理して打ち解ける必要もないだろう、僕達はそういう常識から逃げたしたかったのだ。

 

それから、ほどほとんど変わらぬ山道の景色をおのおの楽しんでいるようだった。

この景色は、普段なら何気なく見ていて、感想すら持たなかっただろう。

 

でも今日は、違った。

 

やはり何か肩の荷が降りたような感じで、この新鮮な気持ちで見る自然は、なんとも表現しがたいが、輝いていて神々しくも見え、心が少し軽くなった。

 

それから二時間ほど走ったところで山道を抜け、また町に出た。

 

「あなた名前は?」