ちょっと休んでいいですか? vol 1
何事にも、終わりはくる。
たとえ、人生の内の一瞬だとしても。
それが、正しくないことだとしても。
2012年6月20日
僕は、どこかも分からない山道をナビに指示されるがまま車を走らせていた。
ちなみに僕は、一人ではない。
隣に座る女性とは、とある掲示板で知り合った。白く透き通った肌に綺麗な長髪で、どこにでもいる普通の子と言う感じだった。
お互いのことは特に詮索したりしない。
きっと色んな思いがあって、いまこの状況になっているわけで、最後ぐらいそんなことを思い出す必要もないだろう。
「良い天気だね。」
彼女は、悲しそうにそう呟いた。
「そうですね」
女性とは、あまりまともに会話した記憶ががなく、女慣れもしていない僕だが、彼女に対しては、何故かいたって冷静だった。
理由は分からないが何か肩の荷が下りたかのよう感覚で、とにかく気が楽で、彼女で良かったと思った。
「なんて読んだら良い?」
「高橋でいいよ、俺はなんて読んだら良い?」
「みく」
彼女は、冷たくそう答えた。
そんな、当たり障りのない普通の会話を少しばかり繰り返したが、帰ってくる返事はとても短い。いわゆる相手に対して興味がない時の返事だと僕は理解した。
せっかく最後をともにする相手として出会ったわけだし、少しばかり距離を縮めたかったが、彼女の心を開くには時間がかかりそうだ。
そこそこのスピードで走る車の窓からは、強風が吹き荒れ、僕たちの沈黙を紛らわせた。
「窓閉めようか?」
「いい」
彼女はそうきっぱりと答える。
ときより窓から吹き込む風は、時より彼女の髪とスカートを翻弄し、白く細い足を露出させるので、思わずチラチラと見てしまう。
こんな状況化において何か下心のような物を持っている自分にとても悲しくなる、そんな人間になりたくなかったはずなのに、いつの間にか欲望にまみれている自分が大嫌いだった。
でも、それが人間であり男なのだと思いたい所だが、自分はクズ野郎だとつくづく痛感させられた。
それから、会話とも言えないやり取りを繰り返して、一時間ほど山道を走ると、小さな町に出た。