まつばや氏の世界

抗え、最後まで

翼の生えた人間 [短編]


この頃遠い昔の記憶、幼かった頃の思い出、あの楽しかった日々を、時より思い起こす事が最近は増えたように感じる。

 

僕は、冷たく冷えた壁に持たれ、カーテンの隙間から入り込む光の光線をじっと見つめながら、眠気が去っていくのを待った。

 

「だれか僕を向かいに来て」

 

地球。いったい何年ここで暮らしていたのだろうか、地球の人の寿命をとうに、何十倍といきる僕達に取ってみればここで生活した期間は人生のほんの一時でしかないはずなのに、

 

なぜ、なぜ、なぜ、

 

こんなにも切なく、こんなにも、悲しく、こんなにも、長く感じるのだろうか。

 

僕は背中に、生えた翼を優しく擦りながら、今日も思い出の中で、空想に浸る今の僕には、こうすることしかできない。

 

あの頃というのが、一生帰ってこない事ぐらい僕はよく分かっている。

 

もう僕が、最後の一人だと言うことぐらいよく分かってる。


それでも前に進まなくちゃいけないのに、僕には、この地球がどうしても合わなくて、窮屈で堪らなくて、ここでじっとしていることしかできない自分が嫌になる。

 

「僕を助けてよ」

 

そう小さくそう呟くと、僕ははっとした、

カーテンをから差し込む日の光が僕の額を真っ直ぐに差し、全開に空いた窓からは、優しい風が吹き込む。

外では、動物達の鳴き声がこだましていた。

 

何かがおかしい。

いつもと違う何か特別な感覚、何年も感じてなかった心の高まり、高揚感。

 

胸がくるしくなるような緊張感に、期待が膨らむ。

 

僕は、急いで、細く弱々しい自分の体にムチをうち立ち上がり、窓の外を覗き込む。

 

「ああ、そうか‥」

 

 

~fin~