罪と罰と[短編]
「人間は決して許されない」
何かの本で、そんな事が書いてあったような気がする。
その通りだ、実際僕達人間に、もう時間は残されてはいないようだ。
村の方からは、嗅ぎ慣れないツンと鼻をつくような焼けた匂いと、誰かの叫び声が途絶えることなく聞こえる。それでも彼らのためにできることなど、ないのだ。
「さて、時間のようだね」
死ぬことは、怖くない。特に思い残した事もない。何も、何もない。
あながち僕は、この時のために生まれたのではないか、と思うほど、つまらない人生だったと、人生を悲観したくなるが結局は自業自得なのだ。
最後にやるべき事が僕には残っている、このままのんびりとは行かないようだ。
僕は、重い腰をあげ、ベットから立ち上がる。
「やっと契約するつもりになったか」
まるで、神の使いかのような神々しい球体状の何かが、僕にそう語りかける。
はじめは、とても鬱陶しい存在だったが、今となってはいい話し相手だった。
僕が君は何者なのかと尋ねると、決まって世界を救うものだとか、お前ら人間のいう、神に近いだのと言う。
はじめはにわかに信じがたかったが、彼が僕に付きまとい、一緒にいる期間が長くなるほど、本当にこの世の者ではないと言うことを僕は、直感的に感じていた。
「なぜ、僕なんだ。」
「そりゃ、お前が俺達に似てるからだよ。考え方がね、だから契約してくれるそう思っただけさ。現に契約する気になったんだろ。」
「契約するだけで世界を救えるか、、、でも僕も死ぬんだろ」
「死ぬよ。でも、君は歴史に名は残せるよ。人間ってそうゆうの好きだろ?ヒヒヒ。お前らは調子に乗りすぎた、自業自得さ、君も分かるだろ?」
いざ死に直面すると、急に怖くなる。心臓の鼓動が次第に大きくなっていく、こんなに感情が揺れたのはいつぶりだろうか、
「僕は、いままでちゃんと生きてなかったんだな。」
「こんな状況だ、いまさら未練もないだろ」
「わかった契約するよ。この瞬間のために僕は生まれてきたのだろうな」
そう思えば、僕と言う人間が救われる気がした。
「良い決断をしたな人間よ」
最後に聞いた彼の言葉は、とても優しかった。
僕は、頭上で光る彼に、そっと手ををかざした。
すると、彼は次第に大きくなり、僕の体を覆った、体は軽くなり、浮かび上がる。
光輝く僕の身体は、四方八方に飛び散ると、世界は、白い光に包まれ、すべての人間は地球から姿を消した。
「決まっていたことだ。人間は決して許されない。」